扉 その2



トボトボ歩いていると目の前にポンと扉が現れた


どこかへたどり着きたいと探していた扉
所在なげに ぽつんと壁にもたれ掛かっている


扉の前に佇み 瞳を凝らすと 
試されているような気がして 途方にくれる


そろそろと近づき 耳をあててみると
気持ちがだんだんぼやけて
するりと扉の中に吸い込まれてしまった


そこでは何も見えないはずなのに 
何かが影のように 自在に姿を変え 
ひっそり 私の後ろについて来る


おぼろげな足音に気づかぬフリをして 
こっそり振り返ると 影は私の思惑に気づかぬように 
するりと扉を通り抜けていった


急いで後を追ってみたが
追うことを意識するやいなや 
忽然と 扉は消えてしまった


やむをえず あたりを見回してみる
探していると またひょっこり現れる


繰り返していくうちに ふと気が付くと
いつのまにか私の足元から水が溢れ出している


足は水に浸されて 水溜りができている
水はどんどん溢れ出し 
足元から膝へ 
膝から身体全体へ浸透していく
 

すると今度は上から 
私の頭にポタリと一滴の水が落ちてきた


冷たいと感じる間もなく 
水は 私の心をさらりと浸したかと思うと 
静かで緩やかな波紋が 
扉の形を作り出して 水溜りに広がっていった


大きく息を吸い込んで 波紋の中を覗き込んでみると
扉の影に耳をあてている さっきの自分がいた