ケセランパサランのような


夜中にコーヒーの匂いやお香の煙が
そこいらに中に漂い始めたりすると
こそこそとポップコーンの弾ける音が鳴り始め
電子レンジからロックのリズムがポンポン響きだす
 サージェントペパーズのイントロのように


キッチンタイルの冷たさが
風邪のウイルスを呼んでいるのも忘れて
少しウキウキしていると
今度はいつのまにか
ジョージハリソンの神秘的なシタールの旋律が
万華鏡の覗き穴からやって来て
タイ象に揺られながら
チベット曼荼羅に向かっているからっぽの自分が
ドリームキャッチャーの上を歩く蜘蛛になっていた


蜘蛛のスピリットは糸を辿って
どんどんあてどもなく彷徨って
生活時間の変化した呼吸を続けていると
あっちのスピリットやこっちのスピリットが
繋がり合ったり離れたり


不思議なパターンが出入りするこの世界は
バーチャルハートで出来ていて
華厳の鏡に映る景色は
まるで波打ち際の増殖夢遊病患者


それでもやっぱり キッチンタイルの冷たさが
風邪のウイルスを呼んでいるので
夏の間にはしまい込んでいた
カフカのスリッパを引っ張り出す


ケセランパサランのようなフワフワ感が暖かくて
回りの空気と一緒に思わず天井から
ぶら下がっている天秤に飛び乗ってみても
天秤はそのまま上手くバランスを
保っているので
あっちに乗ったりこっちに乗ったり


部屋の上の方のの空気は暖かくて気持ちが良い


天秤から下を眺めていると
風邪のウイルスが
ちょっと悔しそうな顔をしているので
反対側の天秤皿に乗せてあげる


とっても嬉しそうなので
暫く天秤シーソーを一緒に楽しんでいるうちに
すっかり風邪をひいてしまった


すると目の前に真っ白い世界が
ゆっくり広がり始めたかと想うと
やがて全て消えてしまった