その日は朝からぽかぽか陽気だった。 用事もなかったので、かまわずそのまま眠っていたのだが、 どうも暑くて寝苦しい。 何か変だなと思い始めるが、取り立てて何が、 という訳でもなかったので、 そのままもう少し寝ようとしたが、 それにしてもやはり部屋…
ところで昨日ふっと思い出したのだけれど、君が失った荷物はどこへ行ってしまったのだろうね。確かあの鞄の中には4脚のティーカップのセットが丁寧に詰め込まれていたはずだ。ティーカップは1950年代頃にアメリカで普通に使われていた物なのだけれど、なぜが…
朝 目を覚ますとブラインドの隙間から 外の乾いた光が入り込む 窓ガラスの内側についた雫 部屋の中の身体気象が亜熱帯状態を作り出している 少し身体が季節に遅れているようだ 嬉しいような物悲しいような気持ちになる ぽとぽと雫の落ちるコーヒーが出来上が…
夜中にコーヒーの匂いやお香の煙が そこいらに中に漂い始めたりすると こそこそとポップコーンの弾ける音が鳴り始め 電子レンジからロックのリズムがポンポン響きだす サージェントペパーズのイントロのように キッチンタイルの冷たさが 風邪のウイルスを呼…
始めてみたグランドキャニオンは何層にも重なった山肌 の絶妙なるグラデーションが彼方まで広がっていた。 当時住んでいたアリゾナ州フェニックスから 車で約8時間。 友人に誘われて初めてキャンプの旅に出た。 途中の道は赤土と岩とサボテンの土漠。 まるで…
トボトボ歩いていると目の前にポンと扉が現れた どこかへたどり着きたいと探していた扉 所在なげに ぽつんと壁にもたれ掛かっている 扉の前に佇み 瞳を凝らすと 試されているような気がして 途方にくれる そろそろと近づき 耳をあててみると 気持ちがだんだ…
約束のある外出はとても億劫だ 時間ぎりぎりまで何とかドロン出来ないかなと そんなことばかり考える その場にいってしまえば それなりに楽しい時を過ごしているけれど やっぱりふらっと出かけるのとは違う 必要以上に意味のない会話や適当な相槌 - たまに素…
面白いものだと思う 伝えたいという想いは何かを表現していくことの 最初のきっかけなのだろう けれど 伝えるということは思いの他 難しい 感情のままでは流れ過ぎてしまう あれっと戸惑い もう一度見つめなおす そうすると穴があく 今度は 投げ出した思いを…