扉 その1



約束のある外出はとても億劫だ


時間ぎりぎりまで何とかドロン出来ないかなと
そんなことばかり考える
 
その場にいってしまえば
それなりに楽しい時を過ごしているけれど
やっぱりふらっと出かけるのとは違う

必要以上に意味のない会話や適当な相槌
 - たまに素敵な出会いがあるとしても


その場に行ってしまうとそれなりに喋るのだけれど
それと同じぐらい何も話さないことも好きだ



一人で散歩をするのが好きだ


でもたまに一緒にぶらぶらして 特に話しもせず
これなんかいいなぁって所で 自然に立ち止まることが
出来る人がそばにいると 気持ちがよくて
私は幸せな気分になる


そんな人とのブラブラお散歩で見つけた扉


少し開いた扉を押そうか引こうかとしばし佇む


いつからこの扉はここにこうしてあるのだろう

一つ一つの色が優しく溶け合って ついた傷や埃が
まるで計算されて描かれたように散らばっている


扉が扉としてではなく 誰かが意図もなく描き出した
世界のようでもある


それはまるで空気中の色んな成分を寄せ集めてできた
菌類のように 空気中の目に見えない いろんな者たち
の話をじっと聞いている


人が忘れている間に自然がこの扉に そっと話かけてい
るようだ